スマホの画面がわれた

おばあさんを毎晩夕食後に離れに送り届ける。杖をついてやっと歩く義母は、四五歩、歩いては進み、四五歩歩いては進み、15秒もかからない距離を何倍もかけて歩く。ついてこなくて平気よ、というが危なっかしくて
振り払われてもついていく。
面倒くさいけど、ほんとはこの時間余りきらいじゃない。昔、私が嫁ぐ前離れにすんでだおばあちゃんのてをとって同じように先導したことを思い出して懐かしいような、甘えたい気持ちになるから。

玄関を開けると私が買った紫色の天然花のアイリスの芳香剤がフワッと香る。義母が一番好きな花だそうだ。とても美しい薫り。お婆さんお爺さんのわずかに漂うアンモニア臭がこれで消える。おやすみを言って玄関の扉を閉めたとたん硬い石の敷石の上にスマホを落として画面が割れてしまった。
割れた画面を今見ながら、逆立ちしても割れた画面は元に戻らないんだなぁ~なんて、時間の流れをこの冷たい空気のなか全身で感じたよ。